『動物園ものがたり』における嘘

芸カ15で頒布した山田由香本のおかげでしょうか。『動物園ものがたり』(注:amazonへのリンク)を読んでくれた人が何人か出てきたもよう。めちゃくちゃいいでしょ。私が書いた文章なんて消し飛ぶほどよかったでしょ。本はつねに無限によい。それについて書かれたものはそこで止まるが、本そのものは読まれる度に更新されて、もっと良くなっていく。もちろん読み手は作品のポテンシャルを引き出そうとするけれど、それはその作品自体のポテンシャルがあってこそだ。

エイプリルフールということで、『動物園ものがたり』に出てくる嘘に着目してみようと思う。じつはこの作品、きわめて効果的に嘘が用いられているのである。その描写を取り上げることで、いま一度、嘘が有する物語内外の機能について考えてみたい……みたかったのだが、時間がかかりそうなので不完全なまま公開する。

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書きかえられないストーリーと熊の場所

なにを思ったのか『白鯨伝説』を観ている。あまりの疲労に頭がおかしくなり、前触れもなしに新山志保の追悼キャンペーンを始めたのである。『ロードス島戦記-英雄騎士伝-』も新山志保が降板する21話まで観た。あなたのディートリットはわたしの原体験でした。

それはさておき、『白鯨伝説』第5話に自分の好みドンピシャのシーンがあった。備忘録として残しておく。主人公のラッキーの故郷の星を滅ぼそうとする惑星破壊兵器「白鯨」は、宇宙船を率いるエイハブ船長の過去のトラウマとしても残る因縁の兵器であった。ラッキーのせいで封印していた記憶を呼び戻されてしまったエイハブは、どうにかして白鯨のことを頭から振り払おうとする。彼は子どものように怯えていた。だがしかし、ついに観念する。

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運命的偶然、あるいは勝負の放棄:第162話「☆めちゃパニック☆」詳論

アイカツ!』における山田由香の脚本では往々にして、同じ事柄・構造・モチーフが様々な差異をまといつつ反復されます。このことを【162:☆めちゃパニック☆】の検討を通じて見ていきます。私が示したいのは、この回には様々な反復が仕掛けられ、かつあるモチーフの意味合いがそれを通じて変容させられているということです。このエピソードにおいては様々な観客とショーの関係が反復され、そのなかで「笑い」というモチーフが表現するものが変容されていくのです。

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見守ること、元気をもらうこと:第117話「歌声はスミレ色」再論

この記事は、アイカツ!Advent Calender2017の20日目の記事です。

こんにちは、山田由香だいすきおじさんです。脚本家 山田由香の仕事としては、たとえば超絶技巧として知られる第62話があります(いちそら学序論 I アイカツ!62話における風沢そらの心理 - 末吉日記」を参照。「いちそら」というのはちょっとミスリーディングで、実際にはたんなるカップリング論ではありません)。しかし、第117話も負けていない。以下ではたぶんファン人気も高いはずのこのエピソードを「見ること」という観点から分析します。

これはなにも「手頃な手法や観点で分析してみたよ」というのではありません。このエピソードにおいて「見ること」は本質的な要素である、これが私の主張です。それによって絶妙に描かれるのは、成長というプロセスの一形態です。人は必ずしも押し付けられたりショックを与えられたりして変化するのではない。むしろそっと「見守られる」ことによって、じっくりと自分の決断を醸成させるということがありうるのです。また本論では少なくとも、このエピソードが「得意なこと」と「好きなこと」をめぐる縦糸と、「見ること」をめぐる諸要素から成る横糸の複雑な絡み合いによって成立しているということは示せたらと思います。私の最終的な結論を認めてくれるかどうかはさほど重要ではありません(認めて欲しいが)。むしろ、この作品がもつ尋常ではない奥行きに気づいていただけたらそれで幸いです。

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不可能に向けて書くこと:長野まゆみ『テレヴィジョン・シティ』論

長野まゆみという作家がいる。1988年に『少年アリス』で文藝賞を受賞、その後は硬質な文体と特徴的な旧字体とで、耽美的な世界を描き人気を博した。初期の小説は幻想小説のような作風で、兄弟や親友同士の精神的なつながりを主題としていたのが、のちには肉体的なつながりを露骨に描くものも増えた。いまは「カルトローレ」のような初期とはまた異なるファンタジーを展開させている。いわゆるボーイズラブ小説としての受容(需要?)はこの作家にとってすでに過去のものなのかもしれない。ところが私は、まさにこの長野まゆみの初期作品のファンであり、この作品群に特別な思い入れを持っている者の一人である。この小論では、そのなかでもファンから一定の評価を受ける長編小説『テレヴィジョン・シティ』について語り、その可能性(あるいは不可能性)について提示することを試みる。

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